概要
ことば | 逆プラセボ効果 |
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よみがな | ぎゃくぷらせぼこうか |
英字表記例 | reverse placebo effect |
表記ゆれ | 逆プラシーボ効果、逆偽薬効果 |
意味
プラセボにより生じた望ましくない作用。事前の予想や指示とは相反するプラセボの作用。
プラセボ効果の逆
偽薬や偽手術など、有効ではないと考えられる医療行為でも実際に効果を示す場合があり、これをプラセボ効果と呼びます。
プラセボ効果の存在を信じるのであれば、有効でないものは、人体にとって益にも害にもならないという薬理学の常識は否定されなければなりません。
有効ではないと考えられるものでも、人体にとって益にも害にもなり得る。そのように考えなければなりません。
プラセボ効果が害になる時、これを「逆プラセボ効果」や「反プラセボ効果」と呼ぶことがあります。
ノセボ効果
偽薬の投与により得られる望ましくない効果は、臨床現場で多数報告されています。
特に医薬品の臨床試験において対照群として設定した偽薬投与グループでも、様々な副作用様の症状が認められることがわかりました。
現在ではそうした害作用の存在が広く認められ、「ノセボ効果」という固有の名前が与えられています。
ノセボ効果ではない逆プラセボ効果
ノセボ効果と逆プラセボ効果は、常に同じ意味として用いられるわけではありません。
実験者による指示の逆
「ピンクのキリンを想像しないでください」と言われるとピンクのキリンを想像してしまうように、ヒトは否定形で物事を考えることが苦手です。
ヒトが依拠する言語システムにおいて、「しない」ことを「する」のは難しいのです。
ヒトの心理は時に、ある過程を辿って指示とは真逆の結果をもたらすことがあります。
不眠症患者に対するプラセボ効果の実験においても、同じような事例が見出されています。
「覚醒を促す薬」で眠れた?
「覚醒を促す薬です」と言って手渡された偽薬を飲んだ不眠症の患者は、ベッドの中でいつものようにこう考えます。
何だか眼が冴えて眠れないな、でもこれは薬の効果なんだから心配してもしょうがないや…
そうしてしばらくすると眠りについたそうです。覚醒を促して睡眠を阻害するはずのプラセボ効果が、逆に睡眠作用として現れてしまいました。
「緊張をほぐす薬」で眠れなかった?
「緊張をほぐす薬です」と言って手渡された偽薬を飲んだ不眠症の患者は、ベッドの中でいつものようにこう考えます。
何だか眼が冴えて眠れないな、薬を飲んだに、薬が効いてないのかな…
そうして中々眠りにつけなかったそうです。緊張をほぐして睡眠を促すはずのプラセボ効果が、逆に覚醒作用をもたらしてしまいました。
解釈と再現性の問題
指示内容と結果の整合性は、実験者の解釈に依っています。
実験者からの事前の指示に対して反対の作用を示す結果となった場合には、「ノセボ効果」よりも「逆プラセボ効果」と表現する方が適切です。
ノセボ効果は望ましくない作用を意味するので、不眠症患者に対して「覚醒を促す薬」と指示した偽薬により不眠が解消した場合には、その作用をノセボ効果だとは言えない可能性があるためです。
有害で望ましくない結果という事後的事象から定義される「ノセボ効果」と、事前の指示と事後的事象の相反性により定義される「逆プラセボ効果」は互いに異なっており、明確な議論のために敢えて後者が使われる場合があります。
ただし、上記のような実験には再現性がなかったとされています。