ランダム化

ランダム化

概要

ことばランダム化
よみがならんだむか
英字表記例randomization

意味

ある一群の要素から複数のグループを作る際、恣意的な判断やいかなる基準をも用いずにグループの要素を選び出す・振り分ける・割り当てること、またはその方法。

無作為化(むさくいか)ともいう。

目的

ランダム化の目的は、新たに作られた複数のグループ間に差異が無いものとし、全てのグループが同じであると見なすことにあります。

別の言い方をするなら、ランダム化の目的はグループ間の違いを無視できるようにすることにあります。

コンピュータによるランダム化

「選ぶ」という語は作為を含意しており、ヒトが関与した上で無作為に「選ぶ」ことはできません。

そのため現在では、コンピュータによりランダム化が実施されています。

ランダム化比較試験

ランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)とは、ランダム化により割り付けられた複数のグループを用いて、「限定的に設定した差異」がもたらす「効果の差異」を比較する試験です。

ランダム化により得られた複数のグループは全て同じで、グループ間に差異がないとみなして構いません。

したがって、もし「効果の差異」があるとすれば、遡及的にその効果の原因を「限定的に設定した差異」に特定することができます。

非ランダムの場合

もし仮にランダム化以外の方法によってグループの要素を割り当てた場合、その割り当て方が「効果の差異」の原因である可能性を否定できません。

唯一それだけが原因であることを求められる、「限定的に設定した差異」の特異性を主張することができなくなってしまいます。

したがって、因果律に基づく統計的推論によって原因を特定するためにはランダム化が必須です。

そして、これ以上に客観的な方法がないという意味でランダム化比較試験は科学的に最も妥当な研究手法だと考えられています。

RCTによる治験

治験で用いられる、「限定的に設定した差異」として最も一般的なのは以下のものです。

  • 薬効成分候補を含有する
  • 薬効成分候補を含有しない

すなわち、薬効成分と目される特定の化合物を含む被験薬と、その成分を含まない偽薬を用いた比較試験です。

RCTにおける原因の特定

薬効成分あり。薬効成分なし。

これ以上ないほど明確かつ極めて「限定的に設定された差異」が何らかの「結果の差異」としての効果をもたらすとすれば、その原因はずばり「薬効成分」だと主張することができます。

したがって、偽薬を対照として用いる医薬品の臨床試験では、ほとんどの場合、ランダム化により下記のように振り分けられます。

介入群被験薬投与群
対照群偽薬投与群

繰り返しになりますが、ランダムではなく何らかの作為の下に両者のグループ分けがなされた場合、その作為そのものが結果の差異を生み出す可能性を否定できず、薬効の原因を正しく評価することができなくなってしまいます。

ランダム化は、臨床試験において薬効成分が有効であると証明するための必要条件の一つです。

二重盲検法との組み合わせ

さて、差異が無いようランダムに振り分けられた複数のグループは、さらに二重盲検化されることでその扱いまで差がなくなります。

  • ランダム化:「介入群」と「対照群」の要素間の差異を同じにみなす操作
  • 二重盲検化:「介入群」と「対照群」の扱いの差異を同じくする操作

そうすると、「介入群」と「対照群」の差異は「被験薬に含まれる薬効成分」だけに限定されることとなります。

従って、もし両群になんらかの差異が見出されたのならば、それは「被験薬に含まれる薬効成分」が原因であると結論されるというわけです。

二重盲検化もまた、臨床試験において薬効成分が有効であると証明するための必要条件の一つです。

ランダム化の問題点

一回性の事象であることの限界

ランダム化の目的は、新たに作られた複数のグループを全て同じであると見なすことです。

決して同じにすることは出来ないけれども、便宜的に同じと見なす。あるグループと別のグループとを同じに近づけるために最大限できること、それがランダム化です。

しかし、もちろん厳密な意味で同じではありません。

特にヒトが関わる試験ならば、それは個別具体的な一回性の事象にならざるを得ず、ランダム化されたグループ間には必ず差異があります。

少人数のグループの場合には、より顕著に差異が認識される可能性があります。

個別具体的な一回性の事象であることが明らかだと見なされるような結果の差異は、予め定められた基準に従って排除されることがあります。

ランダム化の対象は被験者だけ?

ランダム化の対象となるのは、試験される側の被験者に限定されます。

試験する側の実験者がランダム化されることはありませんが、通常は被験者グループのランダム化によって実験者がランダム化される必要はないものとみなされます。

試験・実験や観察においては、何を前提とし、何をどう見なしているかを把握しておかなければなりません。

何が結果に影響を与え、何がプラセボになり得るのか。事前に、あるいは事後でも、それを知ることは出来ないのです。