プラセボ

プラセボ

概要

ことばプラセボ
よみがなぷらせぼ
英字表記例placebo
表記ゆれプラシーボ、プラシボ

意味

科学的に説明不可能な治癒現象を生じさせる全ての物事。プラセボ効果の原因。

特に、見た目や味や匂いは薬のように感じられるが、薬効成分や毒となる成分を含まないもの。

プラセボの具体例

プラセボ(Placebo)の語源は、「喜ばせる」、「満足させる」という意味のラテン語です。

狭義には、患者を満足させるために用いられた薬効成分を含まない偽薬を意味します。

偽薬

現在では、患者を満足させる目的で臨床応用されるものとは別に、医薬品の臨床試験で用いられる偽薬をプラセボと呼んでいます。

有効性を確認したい被験薬について、その臨床的効果を正しく判定するため、形、色、味、香り、硬度が被検薬と同一で、薬効成分は一切含まない偽薬を対照薬として用います。

こうした偽薬が実際に製造可能であるのは以下の理由によります。

  • 被験薬には薬効成分が微量しか含まないため、賦形剤のみで製する偽薬との差が生じない
  • 味や香りをマスクする製剤技術の発達

「くすり」と私たちが呼んでいるものの大半は、それらしい形態や服用のしやすさを考慮した賦形剤である場合がほとんどです。

逆に、薬効成分が「くすり」そのものの色や味、臭いや形態を規定してしまう漢方薬などの場合には、偽薬の製造が難しくなってしまいます。

偽治療

また薬以外の治療行為や医療機器等でも、有効性の根拠となるものだけを含まない処置が偽治療として対照に設定されます。

ただし、上記のような偽薬/偽治療としての「プラセボ」は限定的で便宜的な用法です。

背景的要素

プラセボは元々、気休め目的で医者が患者に与えるパンくずを固めたものなど、丸剤風の製剤を指していました。

ところが、薬効成分を含まないあらゆる剤型のもの、生理食塩水の点滴や偽手術など効果がないと思われる治療的行為などでも治癒・改善効果を上げることが次々と明らかとなり、これらも広い意味でプラセボと呼ばれるようになりました。

さらに現在では、偽薬や偽治療などが利用される総体的な医療行為や儀式、医者と患者が相互に及ぼしあう影響など、医療として意識されない背景的な要素をもプラセボとして捉えるようになりました。

価格や有効性に関する示唆など、言語的な情報さえ医療行為の効果を左右します。プラセボは、ただの偽薬や偽治療ではありません。

現象に基づくプラセボの理解

プラセボという言葉の説明がなんとなく分かったような分からないようなものになってしまう理由は、説明の順序が間違っているからです。

現象ありきのプラセボ

そもそもプラセボは、医療現場において観察された科学的に説明不可能な治癒現象の明示的な原因を表す言葉として用いられました。

なぜそういった治癒効果が現れるのか科学的に説明をすることはできないけれど、きっと原因があるはず。

もし有効成分を含まない偽薬を与えた場合でも病状が回復するのなら、それはまさしく偽薬のおかげだろう。

偽薬こそが治癒効果の原因だ。

そう考えられたのです。偽薬には原因として十分に感じられる象徴作用がありました。

しかし当初の見立てとは異なり、偽薬など明示的な原因だけでは説明がつかないような治癒現象が次々と見出されました。

医療行為に関わるあらゆる暗示的あるいは複合的な要因が、明らかに病状の回復に影響するようなのです。

それらはやはり、原因として特定可能な薬物などとは異なり、科学的な説明を拒んでいます。

したがって、新たに見出された要因、あるいは、未だ明らかになっていないありとあらゆる要素が説明不可能な治癒現象の原因としてプラセボと呼ばれることになりました。

「プラセボ効果」現象とプラセボ

「医療現場において観察された科学的に説明不可能な治癒現象」は、その原因として想定されたプラセボから名を取り、「プラセボ効果」と呼ばれています。

以下のように考えるとすっきりと理解できます。

  1. 「医療現場において観察された科学的に説明不可能な治癒現象」を「プラセボ効果」と定義する
  2. 「プラセボ効果」を生じさせるすべての事象を「プラセボ」と定義する

プラセボの用途開発

医療現場だけで使用されていたプラセボを、より身近に、より便利に使えないだろうか。

語源となった「喜ばせる」、「満足させる」、「慰める」という用途にも積極的に使うことができるのではないだろうか。

プラセボ製薬では、プラセボをより一般的に、普遍的に使えるような工夫を考えています。

プラセボの無効性

プラセボの使い方を考えるに際して、「プラセボ効果」の存在に縛られ、重要な性質を見逃してしまいがちです。

重要な性質とは、プラセボの無効性です。プラセボは、なんといっても効かないのです。

効かないことは、減薬や飲みたがり対策など、服薬の問題を解決する際に有用性を発揮する可能性があります。

ノセボへの配慮

プラセボについて考えることは、その対義語である「ノセボ」について考えることでもあります。

プラセボをノセボとしてしまわないことが重要です。