概要
ことば | 日にち薬 |
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よみがな | ひにちぐすり |
英字表記例 | time |
意味
疾患や悲嘆などを癒す日数の経過を薬に例えたもの。
Time cures…
Time cures all things.
時は全てを癒してくれる。
英語のことわざにある通り、病的状態や死別に伴う深い悲しみなどは、日が経つにつれ軽快することがあります。
このことを詩的に、あるいは薬というモノに擬して表現したことばが日にち薬です。また、似た意味を示す言葉に「時薬」があります。
時間の区切りとしてのイメージ
時薬と比較すると、日にち薬は具体的な「日にち」という表現を使い、日常的な生活の中で意識される具体的な時間の区切りをイメージさせます。
具体性を伴う表現は、癒すものとしての時間を必要とする人にとっては、何かの助けになるかもしれません。
芸術表現
日にち薬を題材に制作された作品があります。
表現形態 | 『タイトル』 | 表現者 |
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説法集 | 『日にち薬』 | 瀬戸内寂聴 |
エッセイ | 『ココロの“日にち薬”』 | 富田富士也 |
随想 | 『あとは日にち薬で』 | 滝沢安子 |
小説 | 『日にち薬』 | 日向蓬 |
楽曲 | 『日にち薬の癒し』 | 異世界 |
楽曲 | 『日にち薬の癒し』 | RELAX WORLD |
楽曲 | 『日にち薬』 | 千穂 |
映像 | 『日にち薬』 | 永田琴 |
日にち薬と偽薬
日にち薬は、癒すという目的を内包したことばです。
しかし、それだけにとどまらない新たな用法があります。
ヒトの日にち感覚
ヒトの日にち感覚は、時代や文化によって異なります。経済効率が優先されがちな現代は、あらゆる場面で多くの人が共有できる明確な社会的時間を求めています。
カレンダーや時計がその象徴と言えます。
ただ、ヒトの感覚は日にちに対してそれほど鋭敏ではありません。3日前の夕食のメニューを思い出すことは難しいものです。
カレンダーなどの助けを借りることなく日にちを数えることは、案外難しいものです。
投薬治療と日にち
現代社会は、明確な社会的時間という概念を医療にも適用する社会です。処方される薬は、決まった日数だけ服用することが求められます。
しかし、ヒトは日にちを数えるのが得意ではありません。
医薬品の服用という行為について、このあいまいな感覚が問題になることがあります。
特に、低用量ピルの服用時に問題となります。
低用量ピルの休薬期間
避妊を目的とした低用量ピルは、28日周期で服薬するよう指示されます。ただし、28日のうち7日間は休薬期間です。服薬の必要がありません。
しかし、この休薬期間の7日間を、ヒトのあいまいな日にち感覚で数えることはそれほど容易ではありません。
このとき、あいまいさを補う対応がとられます。それは、7日間の休薬期間にも服用できる何かを用意するというものです。
休薬期間にも服用できる何かとは、偽薬のことです。
偽薬を服用する期間を7日間とれば、日にち感覚だけに頼ることなく、必要な日にちを数え上げることが出来ます。
偽薬の応用
こうした日にちの経過を偽薬により明確化する方法は、低用量ピルに限らず応用できそうです。
単なる風邪だとわかっていても何かをしなければならない気がするとき、偽薬を服用して様子を見てみることが出来ます。
日にちの経過というあいまいなコトを、偽薬という具体的なモノで置き換えてみるという考え方は、日にち薬の新たな用法になり得るものです。