ノセボ | プラセボ小辞典

概要

科学的に説明不可能な有害事象を生じさせる全ての物事。ノセボ効果の原因。

特に、見た目や味や匂いは薬のように感じられるが、薬効成分や毒となる成分を含まないもの。

ノセボ（nocebo）の語源は「害する」という意味のラテン語です。「喜ばせる」を語源とするプラセボと好対照をなしています。

ノセボということばで具体的なものを指す場合、プラセボとの実質的な違いは全くありません。

その具体的なものを服用した場合に望ましくない結果が得られたか、望ましい結果が得れれたかだけがノセボとプラセボを見分ける基準です。

偽薬はプラセボとして望ましい効果を期待されることがあるため、望ましくない効果をもたらすノセボは日本語で「反偽薬」とも呼ばれています。

薬効成分を含まないプラセボが服用者にとって好ましい結果をもたらすことがある一方、時に好ましくない結果をもたらすことがあります。

この事実を知った上で、偽薬を害を為すために用いると、それはノセボと呼ばれることになります。

つまり、同じ偽薬でも、その使用目的によってプラセボと言ったりノセボと言ったりするというわけです。

ノセボがプラセボの「悪魔の双子」と称されることがあるのは、結果や使用目的という現時点では判別不可能な基準によってしか見分けがつかないためです。

プラセボが薬だけでなく、あらゆる治療効果がないと考えられる医療的行為を指すのと同じく、ノセボという言葉も薬だけに限定されるものではありません。

医療現場における死期の宣告や、宗教的色彩を帯びた死の呪術などもノセボの研究対象とされます。

より身近な例で言えば、白衣高血圧をもたらす白衣の医師もノセボになりうると考えられます。

ノセボということばが拡がりをみせるのは、プラセボと同様に、ノセボもまた否定的な定義を持つことばだからです。

科学的に説明不可能な有害現象の理由をノセボ効果とするなら、ノセボ効果を現しめた全てのモノ／コトはノセボと言えます。

ノセボは、偽薬など具体的なものを指すことばではありません。ノセボを、ノセボ効果という現象に説明をつけるために持ち出される仮の原因だと捉えるとすっきり理解できます。

大きなビニール袋を2枚用意し、一方に「東京 ○月×日」、他方に「長野 ○月△日」と記し、被験者の目の届かないところで両方ともその場の空気でふくらませます。

それらを、『大気汚染に関する官能測定法の検討』という研究目的で被験者にゆっくり大きく吸い込ませて感想を尋ねると、どのような答えが得られるでしょうか？

「東京 ○月×日」と書かれた方の空気が喉の痛みや違和感を引き起こすかもしれませんし、逆の場合も考えられます。実際にやってみないと、どのようなことが起こるかは分かりません。

先入観を利用した単純な例ですが、実際に何らかの違いが感じられたのなら、特にどちらか一方がより悪く感じられるなら、良い方を「プラセボ」、悪い方を「ノセボ」だと言うことができます。