時薬

時薬

概要

ことば時薬
よみがなときぐすり
英字表記例time

意味

疾患や悲嘆などを癒す時間の経過を薬に例えたもの。

Time cures…

Time cures all things.

時は全てを癒してくれる。

英語のことわざにある通り、病的状態などは時間経過と共に軽快することがあります。

このことを詩的に、あるいはモノに擬して表現したことばが時薬です。また、似た意味を示す言葉に「日にち薬」があります。

時薬という表現は、病状のみならず、死別に伴う深い悲しみなど、時間にしか癒せない事柄に対しても用いられます。

現状が永久に続くわけではないという経験から得られた知識は、つらい今を生きる人にとっての大きな希望となります。

「時」の語源は「解き(とき)」?

時間は目に見えず、手に取って確かめることもできない概念です。

概念としての「時(とき)」の語源として「常(とこ)」や「疾(とし)」のような説が提示されています。

しかしもう一つ、「解き(とき)」を語源とする説も。

心のわだかまりやほつれを「解く」ものとして「時」を捉える考え方が、「時薬」という素敵な言葉を生み出したのかもしれません。

芸術表現

時薬をモチーフに書かれた楽曲や小説があります。時薬は、表現者にインスピレーションを与えます。

表現形態『タイトル』表現者
楽曲『時薬』橘大五郎
楽曲『時薬』アンダーグラフ
楽曲『トキグスリ』Aard-Vark
小説『ときぐすり』畠中恵

時薬とプラセボ効果

プラセボの使用/不使用に関わらず、ヒトには自然治癒力があり病状は時間経過と共に軽快してゆくことが多いものです。

プラセボ効果と考えられているものの一部あるいは大半は、時間経過による自然治癒かもしれません。

薬を飲めば風邪は7日間で治るだろう、だが薬を飲まないと風邪は1週間も続くだろう。

『The Skeptic’s Dictionary 日本語版』

プラセボで満たす時間

治癒の大半が時間によってもたらされるものなら、プラセボを利用することの意味はないのでしょうか。

そのようなことはありません。

プラセボ使用について、以下のような利点を挙げることができます。

  • 何もしないのではなく何か良いことをしているという意識の変革
  • 意識の変革に伴う、自分は治るのだという楽観思考の継続
  • 時間経過という捉えがたいコトを、薬というモノで明示的に表現できる

何もせず過ごす時間は、時に不安を高めてしまいます。

プラセボの服用によって時間を満たすことで、治癒への期待を維持し、高めることさえできるのではないでしょうか。