概要
ことば | 偽薬群 |
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よみがな | ぎやくぐん |
英字表記例 | dummy group, placebo group |
意味
医薬品の臨床試験において、薬効成分を含まない偽薬を投与する被験者グループ。
プラセボ群
臨床試験の対象が外科手術など投薬以外の行為である場合、偽薬という表現が適さないため、「プラセボ群」ということばが用いられる。
対照群としての偽薬群
新規医薬品や健康食品のヒトに対する有効性を確かめる臨床試験において、有効成分を含まない偽薬を投与される被験者グループのことを偽薬群と言います。
また、被験薬の投与や被験行為を施される「実薬群/治療群/介入群」に対して、効果の原因を特定するために設定された偽薬群を「対照群」と呼ぶことがあります。
投与するものによる名称 | 偽薬群 |
試験上の機能として付される名称 | 対照群 |
対照群に偽薬群を割り付ける試験デザインを、偽薬対照試験と言います。
対照群の必要性
実薬や被験薬もプラセボ効果を発揮するので、プラセボ効果のみを現わす偽薬を上回る有効性が確かめられて、初めて有効な薬であると言えます。
実薬や被験薬がプラセボ効果を発揮しうるのは、それらが薬として認識されるためです。ありていに言えば、薬に見えるためです。
薬には見えるという特徴や、その他すべての医薬品的特徴を排除し、医師にも患者にもそうとはじっかんされずに実薬や被験薬を投与する方法を開発することができれば、対照群は必要ないかもしれません。
しかし、効果のある薬から「薬に見える」という特徴を失くすことはできないため、「薬に見える」にもかかわらず薬効成分を含まない偽薬を投与した偽薬群と比較して、統計的にその薬の効果を判定する必要があります。
「プラセボ群」の語は不適切?
現在、「プラセボ」と「偽薬」は異なるものを指示することばとして捉えられています。
その要諦は、プラセボが何であるかは、事前にも、事後でさえも分からないことにあります。
プラセボは、偽薬という具体的なものではなく、治療環境や患者と医師との関係性などの背景的な要素全てを含む概念として捉えられています。
臨床試験で実薬や被検薬の投与する被験者グループにおいても、プラセボと認識しうる背景的要素を排除しているわけではないのです。
したがって、プラセボを与えるグループとして設定された「プラセボ群」は存在せず、偽薬を与えるグループ、すなわち「偽薬群」しか存在しえないことになります。
あるいは、偽薬より広い意味の「偽治療群」を用いるしかありません。
偽薬群や偽治療群はもちろんプラセボから逃れることができませんが、実薬群や治療群もまたプラセボから逃れることは出来ないのです。
非介入群
なお、臨床試験等において偽薬を投与する行為そのものの影響を測る際には、非治療群や非介入群といった、何ら施療しないグループが設定されます。
施療しないという状況は、偽薬を投与する場合と比較して、プラセボと認識しうる環境や関係性や行為において差があるため、偽薬投与の影響を測ることができます。
誰が偽薬群か?
現在進行中の治験において、理想的には、誰が偽薬を投与されているかは誰にもわかりません。
そうしなければ、様々な外的要素が試験結果を歪めてしまうからです。
したがって偽薬群は、「確かめればわかるが、確かめなければわからない」という確率的な存在として存在しています。
その意味では、例えは良くありませんが、偽薬群はシュレーディンガーの猫であると言えるかもしれません。(Wikipedia 『シュレーディンガーの猫』)
治験のアルバイトがとても高額なのは、副作用として事前に予測できなかった薬の効果が強く現れる可能性があることと、必然的にこのシュレーディンガーの猫的な不安を招く状況に置かれるからかもしれません。